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東京地方裁判所 平成元年(ワ)11454号 判決 1990年7月13日

原告(反訴被告) 藤元謙蔵

右訴訟代理人弁護士 高島謙一

被告(反訴原告) 葛西興業株式会社

右代表者代表取締役 保戸田三男

右訴訟代理人弁護士 平本祐二

同 栃木義宏

主文

一  原告(反訴被告)の本訴請求を棄却する。

二  原告(反訴被告)は、被告(反訴原告)に対し、別紙物件目録二記載の建物を明渡し、かつ平成元年六月一日から右明渡ずみまで一か月金四万二九七四円の割合による金員を支払え。

三  被告(反訴原告)のその余の反訴請求を棄却する。

四  訴訟費用は、本訴反訴を通じてこれを一〇分し、その九を原告(反訴被告)の、その余を被告(反訴原告)の各負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

(本訴)

一  請求の趣旨

1 別紙物件目録一記載の土地及び同目録二、三記載の各建物は原告(反訴被告)の所有であることを確認する。

2 訴訟費用は被告(反訴原告)の負担とする。

二  請求の趣旨に対する答弁

1 原告(反訴被告)の請求を棄却する。

2 訴訟費用は原告(反訴被告)の負担とする。

(反訴)

一  請求の趣旨

1 原告(反訴被告)は、被告(反訴原告)に対し、別紙物件目録二記載の建物を明渡し、かつ平成元年四月二〇日から右明渡ずみまで一か月金三三三万三三三四円の割合による金員を支払え。

2 訴訟費用は原告(反訴被告)の負担とする。

3 仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

1 被告(反訴原告)の請求を棄却する。

2 訴訟費用は被告(反訴原告)の負担とする。

第二当事者の主張

(本訴)

一  請求原因

1 別紙物件目録一記載の土地(以下「本件土地」という。)及び同目録二記載の建物(以下「本件建物」という。)並びに同目録三記載の建物は原告(反訴被告)(以下単に「原告」という。)が所有していたところ、被告(反訴原告)(以下単に「被告」という。)は、本件土地建物について、浦和地方法務局昭和六二年八月二一日受付第三一二九五号をもってそれぞれ所有権移転登記をしている。

2 被告は原告の右各所有権を否認している。

3 よって、原告は、右各土地建物についてその所有権の確認を求める。

二  請求原因に対する認否

請求原因1の事実は認める。

三  抗弁

1 被告は、昭和六二年八月二〇日、原告との間に、本件土地建物について、代金二億円、同日から一年間に限り、原告において右代金に年二〇パーセントの割合による利息相当金及び契約費用(所有権移転登記等のために被告が支出した登録免許税等を含む。)を加算した金員を被告に返還したときは、本件土地建物を買戻すことができる、この間原告において本件土地建物を占有、使用し、買戻期間が徒過したときは、原告は被告に対し、本件土地建物を直ちに明渡す、利息相当金は最初三か月分を前払、その後一か月分を順次前払する旨の約定で買受け、右代金を支払うとともに、同月二一日本件土地建物について原告主張の所有権移転登記をした。

2 原告は、右買戻期間中利息相当金の支払をしたが、昭和六三年八月一九日に至っても本件土地建物を買戻さなかった。そこで、原告と被告は、同日から一年間に限り、原告において毎月本件土地建物の使用料相当損害金として金三三三万三三三四円を被告に対し支払うことを条件に、被告は本件土地建物について前記約定による買戻と従前どおりの占有、使用を原告に対し認める旨約した。しかし、原告は、平成元年四月一四日以降右使用料相当損害金を支払わなかったので、被告は、本件土地建物の所有権を確定的に取得した。

四  抗弁に対する認否

抗弁事実は否認する。原告は、昭和六二年八月二〇日、被告から、金二億円を、弁済期・昭和六三年八月一九日、利息・年二割(天引三か月分・手取金額金一億八四七三万四四三七円)の約定で借受け、原告は、同日その所有にかかる本件土地建物を、右債務を担保するため、譲渡担保として、被告にその所有権を譲渡した。

(反訴)

一  請求原因

1 被告は、本訴請求における前記抗弁のとおり、本件建物の所有権を取得した。

2 原告は、本件建物を占有している。

3 本件建物の賃料相当損害金は一か月金三三三万三三三四円が相当である。

4 よって、被告は、所有権に基づき、原告に対し、本件建物の明渡を求めるとともに、不法占有開始後である平成元年四月二〇日から右明渡ずみまで一か月金三三三万三三三四円の割合による賃料相当損害金の支払を求める。

二  請求原因に対する認否

1 請求原因1の事実は否認する。原告と被告は、本訴請求における抗弁に対する認否のとおり、本件建物について譲渡担保契約を締結したものである。

2 請求原因2の事実は認める。

3 請求原因3の事実は否認する。

三  抗弁

1 原告は、昭和六二年八月二〇日から平成元年四月一四日までの間、別紙計算表記載のとおり、被告に対し同表③欄記載の各金額を利息として支払ったが、右約定利息は利息制限法に違反するものであるから、同法の制限に従って適法な利息を計算し、超過分を充当すると、最終利息支払日である平成元年四月一四日現在の本件消費貸借契約における残元金債務は、同表記載のとおり、金一億三八一一万七九九五円である。

2 被告は、金銭貸借・不動産取引のプロともいうべきものであり、その被告が金二億円と担保評価して原告に対し融資したのであるから、本件土地建物の評価額は金二億円を下らない。また、本件で被告の提出した鑑定評価書でも右評価額は金一億五六〇〇万円とされている。

したがって、被告は、原告に対し、右評価額金二億円ないし金一億五六〇〇万円と前記残元本との差額を清算義務の履行として支払う義務があり、原告は、右金員の支払を受けるまで、本件建物の明渡を拒絶する。

四  抗弁に対する認否

抗弁1の事実のうち、昭和六三年四月二二日の金四〇〇〇万円及び平成元年三月一四日の金六〇万円を除き、別紙計算表③欄記載の各金額を利息として原告から受領したことは認める。前者の金四〇〇〇万円については原被告間における授受自体を否認する。すなわち、右金員は、訴外株式会社藤元工務店と訴外コスモエコックス株式会社との間の土地売買契約に絡み右両社間で授受されたものである。また、後者の金六〇万円については授受の事実は認めるが、その趣旨を否認する。右金員は、原告の期日徒過により被告が出捐した費用である。

二 抗弁2の事実は否認する。被告が原告に対して有する債権は、別紙利息計算表記載のとおり、昭和六三年八月二〇日現在の貸付残元本金一億七九一二万六七六六円及びこれに対する平成二年三月二一日から支払ずみまで年三割の割合による遅延損害金であり、本件土地建物の適正評価額は金一億三〇〇〇万円程度であるから、被告には原告主張の清算義務はない。

第三証拠《省略》

理由

一  本訴について

1  原被告間に本件土地建物の各所有権の帰属について紛争があることは顕著であり、請求原因1の事実は当事者間に争いがない。

そこで、被告の本件土地建物の所有権取得原因について判断する。

2  《証拠省略》を総合すれば、次の事実が認められる。

(一)  原告は、藤建株式会社の代表取締役として不動産業を営むもの、被告は、金融業等を営む会社であるところ、原告は、昭和六二年八月二〇日頃、被告に対し、本件土地建物を担保に金二億円の融資を依頼し、被告も本件土地建物の担保価値が同額以上あるものと評価して融資を承諾した。

(二)  その結果、原告は、同日頃、被告との間に要旨、被告が、原告に対し、金二億円を、弁済期・昭和六三年八月一九日、利息・年二割の約定で貸渡す旨の契約を締結し、その旨記載された(但し、弁済期については同月二〇日と記載されている。)金銭消費貸借契約証書に署名した(被告の記名もあるが、両者の押印はなされていない。)。

(三)  その一方で、原被告間には、昭和六二年八月二九日本件土地建物について要旨以下の内容で買戻約款付不動産売買契約公正証書が作成されている。

(1) 昭和六二年八月二〇日原告はその所有する本件土地建物を代金二億円で被告に対し売り渡し、被告はこれを買い受けた。

(2) 被告は本契約締結と同時に右売買代金全額を原告に対し支払い、原告はこれを受領し所有権を移転した。

(3) 原告から被告に対する本件土地建物の引渡しは、本契約締結と同時に占有改定の方法により行った。

本契約による所有権移転登記申請手続は速やかに行うものとする。

(4) 被告は原告に対し、本件土地建物を無償で使用することを認め、原告はこれを借用した。また、被告は原告に対し原告が本件土地建物の果実を取得することを認め、原告が従前通り本件土地建物を第三者に使用させているときはその賃料等を原告が受領しこれを取得することを承諾した。但し、本件土地建物の維持管理の費用及び公租公課は原告が負担するものとする。

(5) 被告は、原告が昭和六三年八月一九日までに本件売買代金全額及びこれに対する本契約締結の日から買戻しの日までの年一割五分の割合による利息並びに契約費用(登記のため被告が支出した登録税を含む)を返還して本件土地建物の買戻しを請求したときは、これを売り戻すことを承諾した。

前項の買戻しの特約についての登記申請は(3)記載の所有権移転登記申請と同時にその手続をしなければならない。

(6) 原告が(5)記載の買戻しの権利を行使するには、被告に対しその履行期の五日前に通知し、(5)記載の金員を返還しなければならない。このとき被告は本件土地建物の所有権を原告に返還し所有権移転登記申請手続をするものとする。その費用は原告の負担とする。

(7) 原告が(5)記載の買戻期間を徒過したときは、当然買戻権を失うものとする。

(8) (7)により原告が買戻権を失ったときは、原告は(4)記載の本件土地建物に対する使用貸借は当然に解除され、原告は被告に対し直ちに本件土地建物を明渡さなければならない。

(四)  前項(5)記載の約定にもかかわらず、本件土地建物については、右公正証書の作成に先立ち、買戻特約付の売買を原因とする所有権移転登記ではなくて、昭和六二年八月二一日受付で単純売買を原因とする所有権移転登記がなされている。

(五)  被告は、昭和六二年八月二〇日、原告に対し、金二億円から右金額に対する年二割の利息三か月分及び登記手続費用合計金一五二六万五五六三円を控除した金額を被告に交付した(右交付の事実は後記のとおり当事者間に争いがない。)。

(六)  その後、原告は、従前どおり本件土地建物の占有使用を継続するとともに、別紙計算表③欄記載のとおり昭和六二年一一月から毎月金二億円に対する年二割の利息に相当する金額を支払った(但し後記昭和六三年四月二二日の金四〇〇〇万円及び平成元年三月一四日の金六〇万円を除く。)が、昭和六三年八月一九日の弁済期に元金の支払をすることができず、原告と被告は、同日頃、要旨被告が、原告に対し、金二億円を、弁済期・昭和六四年(平成元年)八月一九日、利息・年二割の約定で貸渡した旨記載した金銭消費貸借契約証書にそれぞれ署名(記名)押印し、弁済期が同日まで延長された。

(七)  以後も原告は同表③欄記載のとおり利息相当金の支払を続けたが、平成元年四月一四日に利息相当金の支払をした後はその支払もなく、原告は、延期された弁済期である同年八月一九日にも元金の弁済をすることはできなかった。

(八)  被告は、平成元年六月三日、国土利用計画法二三条一項の規定に基づき、本件土地について、埼玉県知事宛てに予定対価を金二億四〇一五万七〇〇〇円として土地売買等届出をしたが、指導価格が金一億五五五九万五〇〇〇円とされたため、右届出を取下げた。

不動産鑑定評価書によれば、平成元年八月二〇日当時、本件土地の評価額は金一億五四二四万二〇〇〇円、本件建物の評価額は金六六四万六八〇〇円、積算価格は合計金一億五六〇〇万円とされている。

(九)  被告は、原告に対し、平成元年九月一八日到達の内容証明郵便で、本件土地建物の価値を金一億三〇〇〇万円と評価して評価清算する旨を通知した。

以上のとおり認められる。《証拠判断省略》

被告は、本件契約は買戻の特約は付してはいるが債権との関連のない単なる売買契約であると主張する。

しかし、前記認定事実、ことに本件契約締結に至った原告側の動機、金銭消費貸借契約証書の作成、利息相当金の支払状況、本件土地建物の現実の占有使用状況等の諸事情に徴すれば、本件契約は売買の形式を装ってはいるが、いわゆる売渡担保にとどまるものではなく、買戻代金の名の下に、元本債権金二億円、弁済期昭和六三年八月一九日、期間中の利息年二割とする金銭消費貸借契約を隠匿したところの譲渡担保契約と認めるべきものである。

そうして、本件契約において原告が利息の支払を滞った場合には、本件土地建物の所有権が確定的に被告に帰属する旨の特約があったことは弁論の全趣旨に徴して明らかである(原告も平成二年五月三〇日付準備書面二項で右特約のあったこと、及び遅くとも平成元年五月末日には本件土地建物の所有権を喪失したことを自認している。)から、本件契約は、帰属清算型の譲渡担保契約と解すべきものであり、本件土地建物の所有権が原告に帰属することを前提とする原告のその所有権確認請求は理由がない(仮に処分清算型譲渡担保契約と解してみても、原告は本件土地建物を受戻していないのであるから、同様の結論に達するほかはない。)

なお、原告は、本件建物の付属建物である別紙物件目録三記載の建物についての所有権確認も求めているが、主たる建物の所有権が認められない以上、右請求の理由のないことも明らかである。

二  反訴について

1  原告が本件建物を占有していることは当事者間に争いがない。そして、本訴について判断したとおり、本件契約は、帰属清算型の譲渡担保契約と解すべきものであり、原告が利息の支払を滞った場合には本件土地建物の所有権が確定的に被告に帰属する旨の特約があったところ、原告は平成元年四月一四日以降の利息の支払を怠ったものである。

そうとすれば、被告は、前示金銭消費貸借上の債権の満足を得るため、前示譲渡担保権を実行し、占有者である原告に対し本件建物の明渡を求めることができるものというべきである。

2  そこで、進んで被告の清算金支払請求権による留置権行使の抗弁について判断するに、譲渡担保契約においても、清算不要の特約があり、かつその特約が利息制限法や民法九〇条に照してもなお有効であると認められる特段の事情がないかぎり、常に清算を要すべきものと解するのが担保権設定の趣旨にも合致し、合理的な解釈ということができるから、本件契約においても、債権者である被告は譲渡担保契約の趣旨に従い清算義務を負うものと解すべきであり、被告が担保目的実現の手段として原告に対し本件建物の明渡を訴求した場合に、原告が右清算金の支払と引換えにその履行をなすべき旨を主張したときは、特段の事情がないかぎり、被告の右請求は、原告への清算金の支払と引換えにのみ認容されるべきものである。

また、不動産を目的とする譲渡担保が帰属清算型の場合、清算金の有無及びその額は、債権者が債務者に対し清算金の支払もしくはその提供をした時もしくは不動産の適正評価額が債務額(評価に要した相当費用等を含む)を上廻らない旨の通知をした時を基準として確定されるべきである(最高裁判所昭和六二年二月一二日判決・金融法務事情一一五四号三九頁)。

しかし、本件においては、次のような理由により、被告が原告に支払うべき清算金は存在しない。

すなわち、右清算金は、被告から原告に対する前記認定説示の適正評価額が債務額を上廻らない旨の通知(右通知における本件土地建物の評価額は後記適正評価額とは異なるがその差額の程度に照しなお有効と解すべきである。)が原告に到達した平成元年九月一八日現在における本件土地建物の時価から同日現在における被告の債権額を差引いた残額であるところ、まず、本件土地建物の右通知到達時の時価について検討するに、右時価が貸付当初の貸主の主観的評価或いは国土利用計画法上のいわゆる指導価格に直ちに依拠すべきものではなく、客観的に確定さるべきことはいうまでもないところ、前叙のとおり、平成元年八月二〇日現在における本件土地建物の鑑定評価による価額は金一億五六〇〇万円であることが認められ、その後右通知到達時においても右価額に変動はないものと推認されるから、右価額をもって時価と認める。

次に、右通知到達時の債務額について検討するに、抗弁1の事実のうち、昭和六三年四月二二日の金四〇〇〇万円及び平成元年三月一四日の金六〇万円を除き、被告が別紙計算表③欄記載の各金額を利息として原告から受領したことは当事者間に争いがない。

そこで、右の争いのある各支払について考えるに、まず、右昭和六三年四月二二日の金四〇〇〇万円についてみると、《証拠省略》を総合すれば、原告が、前同日頃、被告の管理部長である吉田実に株式会社武蔵野銀行所沢支店発行の金額四〇〇〇万円の小切手を交付したこと、右金額がその頃コスモエコックス株式会社の預金口座に入金されていること、当時原告の経営にかかる藤建株式会社は、所沢市有楽町六七一番一宅地六一八・一八平方メートルを購入したが、その代金の支払に窮していたこと、右土地について、同年四月一九日受付でコスモエコックス株式会社を債務者、インターリース株式会社を抵当権者とする債権額金三億円の抵当権設定登記がなされていること、同月二二日、藤建株式会社からコスモエコックス株式会社に対し金三億円が返済されている(領収証の作成名義もコスモエコックス株式会社となっている。)ことが認められ、原告本人は、右事実を前提に、右金三億円も被告から融資を受けたものであり、前記金四〇〇〇万円も本件金銭消費貸借の返済分として吉田に交付したものである旨供述し、前掲各証拠によっても、コスモエコックス株式会社の代表取締役は被告と同様保戸田三男であり、両社が関連会社であることも窺われないではないから、原告本人の前記供述もあながち全く裏付けがないものと決め付けることはできない。

しかしながら、右金三億円の融資の全貌は未だ解明されておらず、原告本人の思惑がどうであったかは別として、前記認定事実に基づく限り、むしろ昭和六三年四月二二日の金四〇〇〇万円が被告ではなくてコスモエコックス株式会社に支払われたものと解する方が自然であって、右支払を被告に対する支払と同視することはできないというべきである。

また、平成元年三月一四日の金六〇万円についても、原被告間におけるその授受自体は被告も認めるところであるが、それが本件金銭消費貸借の元金・利息の弁済として支払われたものと断定するに足りる的確な証拠はない。

そうすると、前記争いのある各支払金額が本件金銭消費貸借の元金・利息の弁済として支払われたことを認めることはできないことに帰着する。

そして、以上の事実を前提に利息制限法に基づき同法所定の制限超過利息を元本に充当して計算すると(被告において実際に契約締結の費用として支出した金額については具体的に立証しないから、契約当初の天引分についてはすべて利息とみなして計算することとする。また、利息は後払が原則であり、本件においても前払の特約の存在については立証が十分でないから、昭和六二年八月二〇日から同年一一月一八日までの分の利息は天引されて支払ずみであり、同日に支払うべき利息はなく、同日の金三三三万三三三四円の支払は全額元本に充当される。利息の計算につき借入初日及び返済日を算入する。昭和六三年は閏年であるが、日割計算についてはすべて一年を三六五日として計算する。円未満は切捨てる。)、結局右通知到達時における被告の原告に対する債権の残元本は、別紙計算書記載のとおり金一億七五五六万八二四二円となり、本件土地建物の時価を遥かに上廻るものというべきである。

したがって、被告が原告に支払うべき清算金の存在を前提とする原告の前記抗弁は採用できない。

3  次に、本件建物に対する賃料相当損害金の起算点及びその額について判断する。

本件契約において原告が利息の支払を滞った場合には本件土地建物の所有権が確定的に被告に帰属する旨の特約があったこと及び原告が遅くとも平成元年五月末日には本件土地建物の所有権を喪失したことを自認していることは前記認定説示のとおりであり、債務者たる原告は同日の時点で買戻権ひいては本件土地建物の所有権を終局的に失い本件土地建物の占有権原も失ったものというべきであるから、右所有権喪失の日の翌日である同年六月一日の時点をもって賃料相当損害金の起算点と認めるべきである。

そして、一般に建物の賃料額はそれ自体及び敷地の公租公課の額の三倍を超えないこと(倍率方式)は顕著な事実である。

本件記録中の平成元年度の評価証明によれば、本件土地の評価額は金七九一万五〇五〇円、本件建物の評価額は金二一九万六七〇八円とされていることが認められ、同年度の本件土地建物に対する固定資産税の額は、右各金額に一〇〇分の一・四を乗じて、それぞれ金一一万〇八一〇円、金三万〇七五三円、同年度の本件土地建物に対する都市計画税の額は、右各金額に一〇〇分の〇・三を乗じて、それぞれ金二万三七四五円、金六五九〇円となるから、結局本件土地建物の同年度の公租公課は、これら税額の総合計金一七万一八九八円である。

したがって、本件建物の月額賃料相当損害金は、次の算式のとおり金四万二九七四円と認められる。

金一七万一八九八円×三÷一二=四万二九七四円

4  そうすると、原告は、被告に対し、本件建物を明渡し、かつ平成元年六月一日から右明渡ずみまで一か月金四万二九七四円の割合による賃料相当損害金の支払義務があるというべきである。

三  結論

以上の次第で、原告の本訴請求は理由がないから棄却し、被告の反訴請求は前項で述べた限度で理由があるから認容し、その余は理由がないから棄却し、訴訟費用の負担について民訴法八九条、九二条を適用し、仮執行の宣言については、本件諸般の事情にかんがみ、これを付さないこととして、主文のとおり判決する。

(裁判官 小澤一郎)

<以下省略>

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